野分

 夏目漱石の「野分」を読む。

文学に生きるということを端的に記した名著だと思う。

作中の人物は文学に生きるので

当然、一生名誉や富と無縁という可能性が高い。

さらに漱石の文学は救えない終わり方が大半なので何を云わんやである。

でもね、かっこいいのです、文学に生きている登場人物が。

 この本のミソは、誰でも文学的に生きられるが

その覚悟はあるか、である。


 もう一ついうと、彼の生きた明治の40年は不況が35年、

好景気が5年という絶不調の景気状態であった。

 現代も10年の不況が過ぎ、景気が上向いても

富むものは富、落ちるものは落よの世界である、救えない。

新たな文学の天才に必要な時代の風は吹いているかなと考えている。