笑う友人

 以前所属していた研究室内で、私と同期の人の趣味が「アイドルの写真集」であった。
当初はっきり言ってこの趣味には辟易していた。
 どうしてかというと生理的なものもあるが、
高いお金を払ってアイドルという偶像を追いかけることに虚しさを感じていた。
どうせ手に入らないブラウン管の向こうの世界の住人ではないか、
本音を聞けない人にどうして愛憎がわくものか。
 かと言って人の趣味にとやかく言うわけにもいかず、
時折同期から聞かされる写真集の話に適当に相槌を打つだけであった。

 そんな折、友人に酒を飲みながら「同期の趣味の写真集というのがわからない」
と愚痴をいうと、その友人はチャシャ猫みいたな顔をして
「それはすばらしい趣味だ」と言っていた。
わたしは酔っ払っていたので、
このチャシャ猫を踏みつけてもいいのだろうか、
だってすばらしさのわからない無様な私を見て笑っているように見えるからと思ったが、
酒を飲んでだるかったので止めた。
 

 ところで、現在私は卓球を行いに体育館に週に一度通っている。
移動手段は車で、道中ラジオを聴きながら運転をしている。
サークルの終わってからのラジオ番組が某アイドルの番組でこれがが実に面白い。
 初めて聞いたときは二十歳になったら何をしたいかがテーマで何か話していたが、
あらかじめ用意されていた質問に「やりたいことはやりたい」、
「やりたくないものきっとやってもつまらない」とずばずばと受け答えしていた。
とてもハキハキしていたので、どうも考えてアイドル像と少し違うなと感じた。


 また、こんなこともあった。
どうやらどこかの週刊誌が虚報をしたらしく、その風評が家族にも及んでいるらしい。
その抗議をしているときに
「私は芸能人だから本当にゴシップがあったときにはスクープされるの仕事柄しかたがない。」といっていた。
この会話を聞いた私は自分の好きなことをやっていることを自覚して、
有名税を払うのを厭わないのはすごいことだと思った。


 このような訳でアイドルが好きという気持ちもわかるに心境が変化しつつある。
そうすると自然と同期の趣味には悪い感情を持ってすまなかったとも考える。
しかしやはり、愚痴を言った瞬間に笑ったチャシャ猫は踏むべきであったとも悔やんでいる。