本について

参考書を繰り返してやっている。三回目に入るとさすがに内容をおぼえてきた。「文、百読すれば意味自ずから」は実は文によって本当だったり嘘だったりするのだがこの文は繰り返し読めば理解できる類らしい。
塩野七生ロードス島攻防記」を読む。内容は十字軍の時代の三大騎士団の一つ聖ヨハネ騎士団がトルコにイスラエルを追われロードス島に拠点を置き、そこでさらにトルコに追い出されるまでの顛末を中心に扱った作品。
この本で面白かったのは、技術が価値観や制度を変えたところがよく判ったことである。15世紀半ばから使われた大砲が戦闘の質を一変させたそうである。というのも、それまでは少数の精鋭の質を確保できれば、大勢の住民のいる非支配地域を運営できた。しかし大砲が攻城戦の主力となると領土を維持する軍事力に変化がおこり、ある程度の質を持った大勢の兵隊が主力に変わったそうである。
また日本は文明開化のときから西洋が文明の進んだという考えが付着しているが(というか私が)大砲の導入をいち早く取り入れたトルコが西洋を追い出し勢力圏を広げていたことによって、西洋に危機感が生まれて群雄割拠していた欧州に変化が起きて、今に繋がる国家観が成立した。
この時代のトルコに圧迫を感じる西洋があって、後に繁栄し、現代の失業率の高いやや荒れてきているヨーロッパを見て、ある地域がいつまでも栄え続けることは難しいと思った。