プレゼント

正月もおわり勉強を再開した。しかし、もちろん勉強のことなど書いても面白くないので友達にもらった珈琲豆のことを書く。
友人は大学時代から就職した後もある都市に住み続けている。その街には全国でも有数の珈琲屋がありそこの豆を買ってきてくれた。お金がある自分には足繁く通っていたが、このところは時間もお金もないので独特の作業着で飄々とした立ち振る舞うマスターともしばらく会っていない。店の機械は古く、したがって焙煎時のガスの抜けが悪く独特のスモークがタンクにたまる。普通ならばこの煙は悪いほうに作用するのであるが、それを逆に味に深みをつけることにつかっているので、すごい技術である。
早速そこの店の淹れ方を思い出して三杯ほど飲んでみた。全体的にエキスの抽出を速くして高温でサッと淹れた。飲み物というものは不思議なもので、とりわけ珈琲は匂いを嗅いだだけでマスターのいる店に行って来たような感じがしたが、飲むときには飲むことに集中しているのでそんな感覚はつゆと消えた、幻想はホンの一瞬のことであった。
正気に返るほど強い刺激が来たのでのほほんとしていられず、ああ、飲んでいたのだなと思い、正気で飲んでみた。味覚的にいうとやはりスモークを厭味にならないぐらいギリギリに込めているので癖のつよい味が特徴である。このギリギリ感もあと半歩多すぎると味覚として知覚できないレベルなので旨いという観念は難しいものだと思った。
ひさびさにこの店の美味しい珈琲を飲めたので満足である。豆を送ってくれた友人はプレゼントを人気取りの道具とするタイプではなく、喜んでもらうために送るタイプなのでもらった側としても気が置ける贈り物であった。今度は彼にお礼をしよう。