商店街での買い物

前に住んでいた街に、Tという商店街あり、私はそこで随分とお世話になった。お世話になったというのはただ単に売り買いだけではなく親交があったり、商品をまけてもたったということである。一日平均で食費が130円ほどで、尚且つタダで発泡酒をもらっていたので晩酌もできた。しかし、若い男が自炊をして、その買出しを商店街でしているというもの珍しさだけでサービスしてもらった訳ではなかったようである。今思い起こしてみるとボンヤリとその理由がわかったのでそれを書いてみる。
一つは、旬のものばかりと買っていたことである。旬のものは美味しくて安い。
二つ目は、商店街の中でよい商品を扱っている店で買うことである。よい商品を扱うお店は少々高いが美味しいので幾度と通っているうちに自然とそこで買うようになった。よい商品を扱うお店の安い商品のほうが、結局は安い店の普通の商品よりはるかに鮮度も量もよいので選択するまでもなかった。
三つ目は、店員さんにどの商品を買えばよいのかを、挨拶してすぐに聞くことである。そして相手は何度か通っているのでこちらの懐事情や調理のしかたを知っているので、相手の提示した商品の一つ目か二つ目で決めることである。売り買いで相手のリズムを崩してはならない。
四つ目は、会話である。まず初めに挨拶、次に前に買った食材の評価などである。珈琲の小売店での経験から、小さくてもいいお店は商品に自信を持っているので、その自信を褒めるのである。褒めるといっても、実際よい商品を扱っているので無意識的に褒めることが多くなるのであるが。
また会話の流れとしてどのような調理がよいかと尋ねる場合がある、この場合の回答は面白いことに例外なく生で食べなさいと言ってくる。これは魚屋、パン屋、鶏肉屋、酒屋(ウィスキーは生で飲め)などジャンルを問わない、商品単体で十分に美味しいので余計なことをするな、という自信の現われであろう。
五つ目は、母の日、クリスマスなどにお礼の花を配ったりすることである。もらうと嬉しいようである。
と、この五つを実行するとアラ不思議、魚屋では魚のアラが、酒屋では賞味期限の切れたお酒が、肉屋ではから揚げが、といった感じで商品としては残り物であるが、結構美味しいところを皆さんが喜んでタダで提供してくれる。
ここでどうして皆さんがよくしてくれるのか、という問題の考察はまた明日。