「規制緩和」珈琲の場合

 日本ではここかしこで「規制緩和」が叫ばれている。
自分の国だとそんなこと言われてもピンとこないが
自分の趣味の珈琲に置き換えて少し考えみる。


 珈琲の世界で最近評価が高いのが中南米のグァテマラである。
中南米には他にコロンビア、ブラジルといった有名な産地があるが
そこよりもおいしいと思う。どうして美味しいのかというとどうも
今回のキーワード「規制緩和」が関係しているらしい。


 グアテマラの珈琲がすべて美味しいというわけではない。
しかしグアテマラの珈琲の上位は確実においしい。
というのもこの国ではいち早く珈琲の品評会を開いたからである。
その品評会では豆を浅め、中煎り、深煎りに焙煎したものを
規定の手順で審査してポイントを付け、
そのポイントに従って順位と称号が与えられるのである。
 もちろん称号に届かないポイントの豆は品評会に出しても
何の付加価値をつけることはできない。
 この審査はかなり厳しいもので上位トップテンに二年続けて入ることは
栽培に熱心な農場でもなかなか難しいことである。
 競争は激しいが良い豆が生産、紹介されている。


 一方、中南米の雄ブラジルであるがここでは珈琲の取り扱いは
外貨獲得を安定的にするために公社が一手に引き受けている。
そしてなにが行われるといるかというと珈琲のブレンドである。
○国×州産の豆として出荷するときに北海道ぐらいの面積の州から
色々なレベルの豆を混ぜて、まあ飲める味にするのである。
 そのような訳でこのぐらいの値段でこのぐらいの味のブレンド
作ってと依頼がくるので、クライアントを満足させられる
ブレンドの技術者は引っ張りだこである。


 このように二つの国を見るとやはり自由化によって同じ生産者でも
貧富の差が出やすいのはグァテマラであろう。
 しかし新進大手の珈琲チェーンが品評会上位の農園と特約を結んで豆の供給を
契約するのもやはりグァテマラである。味の差は歴然としている。
顧客の要望に沿ってブラジルやコロンビアでも品評会が開かれるようになった。
 消費者としては品評会を望みつつ、国家政策としては自由と平等の
利害調整が難しいのだろうと考えている。


 アラブ人が見つけカトリック支配のヨーロッパで文化として根づき
植民地支配のもと中南米モノカルチャー生産を強いられて珈琲であるが
現在では貴重な外貨獲得の手段として、また文化として根付いている。
この文化としての珈琲が「規制緩和」という
波にもまれながらどのように発展していくか楽しみである。